雷管について
硝酸アンモニウムによる火薬も爆発させられる記載
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●工業雷管
爆破薬に爆ごうを起こさせるための火工品。広義に軍用雷管に対して工業用雷管のことをいう場合もあるが、狭義に電気雷管に対して導火線による炎で、その機能を発揮するものをいうことが多い。これに電気的点火装置をつけて電気雷管を作る。金属板、またはプラスティック板を打ち抜いて作った管体の底部にテトリル、ペントリットなどの爆薬(添装薬)を圧搾し、その上に起爆薬を詰め、さらに穴のあいた小さい金属性の内管をかぶせて補強した形のものが一般的に用いられる。初め管体に起爆薬だけを詰めたものが用いられたが、底部に添装薬を詰め、これに爆発を起こさせるだけの起爆薬を使用すれば十分であり、また内管をかぶせることにより威力を大にしうるので、前者のような混成雷管で、かつ後者のような補強雷管になったものが用いられている。銅の管体に起爆薬として雷コウぼう粉(雷コウ80%塩素酸カリウム20%)を詰めた雷コウ雷管(銅雷管)が普通に用いられ、アルミニウムの管体にアジ化鉛やA.S.A組成(アジ化鉛、スチフニン酸鉛、フレーク状アルミニウムの混合物)を用いたアジ化鉛雷管やA.S.A雷管もある。雷管起爆作用は、
(1)雷管のガス衝動による起爆:雷管起爆時のガス衝動によって生ずる圧力の大きさは実験者によって異なるが、30,000~60,000kg/平方cm程度と推定される。雷管の爆発による衝撃波の伝播速度は爆発初期において2,000~3,000m/s程度である。この程度の衝撃作用では爆薬を起爆させるには限界値で、特にニトログリセリンを含まない爆薬が起爆できるかどうかは疑問である。
(2)雷管破片による起爆:雷管破片により爆薬は起爆しやすい。雷管と爆薬との殉爆距離は雷管の底方向が最も多きく、側面方向がこれにつぎ、斜前方では爆薬を起爆させ得ない。これは雷管の底部が凹んでおり、その結果爆発が中央に集中するためである(爆薬に凹形の金属をつけて爆発によりジェットを形成する現象をノイマン効果という)。雷管破片によって雷管から1m離れた硝安爆薬も起爆される。雷管の破片による起爆作用はガス衝動による起爆作用よりはるかに大きい。
などが要因となっていると思われる。
●電気雷管
工業雷管に電気的点火装置を結着した火工品。電気を導くための2本の細い皮膜銅線(脚線)をゴムなどの塞栓に差し込み、その先の皮膜を取り、その根元を適当な材料で動かないように固定する。銅線の先端に径0.025~0.03mm程度の細い白金線を溶接し、これに点火薬を結合剤で練ってペースト状にしたものを球状に取り付け、その表面を皮膜で覆う。白金線は白金イリジウム合金(白金90%イリジウム10%)で長さ約2mm(抵抗約0.6~0.7Ω)である。これを工業雷管の管体内に差し込み塞線部分を締めつけてかたく結合する。電気雷管の脚線を電気発火器に連結し、1~1.5Aの電流を流すと白金線が加熱されて点火薬が発火し、雷管部の起爆薬、次いで添装薬が爆発する。電気雷管の点火装置と雷管部との間に延時薬を置いたものが遅発電気雷管であって、点火薬の発火によりまず延時薬が燃焼し、これが燃えた後に雷管が爆発する。延時薬の長さや組成を変えると電流を通じてから雷管が爆発するまでの時間を変えたものができ、これを使用すれば一群の爆薬をある時間間隔で順次に爆発させることが可能である。延時薬としては昔は黒色火薬を用いた導火線が使われていたが、近ごろはガス発生量の少ない鉛丹・ケイ素や過マンガン酸カリウム・アンチモンなどの混合物が用いられている。
○その他の用語解説
●点火薬
火薬に燃焼を起こさせるために使用される火薬類。衝撃、摩擦、電気的加熱などにより発火させる。猟銃、小銃などの発射薬に点火するためには衝撃により確実に発火し、また火炎が大きいことが必要で、雷コウ13~17、塩素酸カリウム45~55、および硫化アンチモン30~50%の混合物が用いられ、これにガラス粉を加えて発火しやすくし、ゼラチンなどの結合剤がわずかに加えられている。電気雷管に用いられるものは電流による白金線の加熱で発火した火炎で下方の起爆薬を爆発させるのであるから、発火感度が鋭敏で着火性の良いチオシアン酸鉛、塩素酸カリウム混合物や、ジニトロソレゾルシン鉛などが用いられている。
●伝爆薬
爆発しにくい爆薬を完全に爆発させるために用いる爆薬。たとえば鋳造したTNTのような非常に鈍感な爆薬は雷管を用いただけでは完全に爆発させることはできない。この場合に雷管だけで確実に爆発するテトリル、RDX、または粉状のものを圧縮したピクリン酸やTNTの様な爆発しやすい爆薬を中間において、まず雷管でこれを爆発させ、その爆発威力によって本体の鈍感な爆薬を爆発させる方法が取られている。このように爆発しやすいものから、しにくいものへと次第に爆発を伝達させていくことを伝爆という。工業雷管の添装薬も一種の伝爆薬である。また、伝爆薬はデトネーター、ブースターとも呼ばれる。