・・・・ミノフスキー***・・・(自爆)
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国際熱核融合実験炉:日欧、誘致へ増額合戦
核融合発電を目指した国際熱核融合実験炉(ITER)の建設地を決める関係6カ国・地域の次官級会合が18日、ウィーンで開かれる。青森県六ケ所村への誘致を主張する日本と、仏カダラッシュを推す欧州連合(EU)が互いに譲らず、交渉は、巨額に上る建設費の負担金を双方がどれだけ上積みできるかという前例のない「増額合戦」となりそうだ。【元村有希子】
■最大10%
自民党本部の一室に16日、ウィーンへの出発を直前に控えた文部科学省幹部がひそかに集まった。核融合エネルギー推進議員連盟(平沼赳夫会長)の議員らに河村建夫文科相が「原子力予算をやりくりして、10%上積みできる」と説明した。
「欧州と戦って日本が勝ったことがあるか。子どもの手が抜けても引っ張る覚悟がないと、向こうは手を離さない」「日米韓の3者だけでも造るぐらいの覚悟で臨むべきだ」。議員からはそんな強硬意見も飛び出した。
建設地は昨年中に決まる予定だったが、米韓が日本を支持したのに対し、中国とロシアが欧州を推し、3対3のこう着状態に陥った。ITERの建設費は今後10年間で約5700億円、運転費は稼働から20年間で約6000億円かかる。誘致した国は建設費の48%、運転費の42%を負担する。最近の日欧交渉で、EUは誘致の決め手として、建設費負担の上積みをほのめかし、日本政府も同様の対抗策を迫られた。
関係者によると、文科省は建設費の上積み額を「最大20%」と希望したが、財務省は「10%まで」と譲らなかった。それでも上積みは約570億円に上る。「EUが10%以上の上積みを提案してきたら持ち帰る」ことも指示した。文科省内には「相手ペースの交渉では負ける」と焦りがにじむ。誘致が閣議了解された2年前から、「負けるという選択肢はない」(文科省幹部)からだ。
18日の会合では、日欧がそれぞれ上積み額を提示する見通しだ。「各国が出せるという金額を合計したら、予算を超える。なのに動かない。こんな国際協力は聞いたことがない」。文科省幹部はそう嘆く。
■安全面で課題も
誘致にこだわる理由は建設に伴う波及効果への期待だ。ITERには超真空、超電導磁石などの先端技術が必要となる。大竹暁文科省核融合開発室長は「建設や運用でノウハウが蓄積され、実用化後も先頭を走れる。原子力では、原子炉で7割のシェアを握った米国が得をした」と話す。
核融合発電の実用化は順調でも2050年以降とされる。日本原子力研究所の奥村義和ITER業務推進室長は「60年代には不可能といわれた核融合が、原理を実証できるところまできた。あとは各国のやる気次第」と自信を見せる。
しかし、安全面、技術面の課題は多い。「原発に比べて、安全でクリーン」とされるが、大量の中性子がぶつかっても安全な材料は開発されておらず、計画終了後には3万トンの低レベル放射性廃棄物が出る。
六ケ所村に誘致した場合の日本の負担総額は、上積みがなくても約6000億円。「原子力予算の枠内で」との原則はあるが、「他分野の研究費圧迫につながる」と心配する研究者は少なくない。
日本への誘致実現にはロシアか中国を取り込み「4対2」にする必要がある。交渉が決裂した場合、日米韓を中心に欧州抜きで建設する構想が現実味を帯びてくる。そうなると、さらなる負担増加は避けられない。
■六ケ所村では
六ケ所村では、大規模産業集積地を目指した国家プロジェクト「むつ小川原開発」が進められている。工業用地2800ヘクタールの約6割が売れ残っており、青森県には「ITERを開発の起爆剤にしたい」との思惑がある。県経済界も3月に青森市で誘致総決起大会を開くなど、官民を挙げた誘致活動を繰り広げている。
県は誘致が実現した場合、運転開始から30年間の県への経済効果を1兆2000億円、雇用効果を約10万人と試算する。一方、建設用地の無償提供や高圧送電線の整備などで県費負担が生じ、判明分だけでも最低250億円はかかる。
ITER解体時に発生する放射性廃棄物を県内で処分する方針も打ち出したが、処分地はまだ決まっていない。誘致に反対する市民団体代表の平野良一さんは「国や県はITERの危険性や県費負担などを地元と議論しないままに誘致を進めてきた。まさに県民不在だ」と反発する。【湯浅聖一】
■ことば(ITER) 核融合発電を目指す実験炉。85年に米国と旧ソ連が合意し、後に日米韓中露とEUの6カ国・地域による協力で世界に1基を建設することになった。太陽でも核融合反応が起きていることから「地上の太陽」とも言われる。
重水素と三重水素を真空容器中で1億度以上に熱すると、原子核と電子がばらばらになり、原子核が融合してヘリウムと中性子に変わる。中性子が容器の壁に衝突して出す熱を利用して発電する。理論上は燃料1グラムから石油8トン分のエネルギーが得られる。重水素は海中に無尽蔵にあり、原子力発電の核分裂反応と違って、暴走しないのが長所とされる。
毎日新聞 2004年6月18日 0時51分